電気主任技術者(以下、電験資格者)は、企業の電気設備を安全かつ安定して運用するために欠かせない存在です。多くの技術系資格のなかでも、取得後の“キャリアの幅”が非常に広いことが特徴で、働き方や年収レンジ、携わる業種が大きく変わります。本コラムでは、電験を取得した後にどのようなキャリアの道が開かれるのか、具体的なポジションやキャリアステップとともに紹介します。
■ 1. 最初のキャリア:設備管理・保全職
電験三種を取得した人がまず最初に歩むキャリアとして最も多いのが「設備管理」や「保全」と呼ばれる仕事です。
ここでは、受変電設備の巡回・点検、異常時の対応、工事立ち合いなど、電気設備の安全運用が中心になります。
経験を積むことで設備全体の理解が進み、中長期では「保全計画の策定」や「更新計画の立案」など、より上流の仕事にシフトしていくことができます。
■ 2. 中級キャリア:主任技術者として選任される
次のステップとして、大きな転機となるのが「主任技術者の選任」です。
主任技術者として選任されると、企業の電気設備の保安監督者として正式に登録され、以下のような責任と役割が発生します。
・年次点検や法定点検の計画・管理
・協力会社の選定・監督
・トラブル発生時の判断および復旧指揮
・電気保安規定の作成・改定
会社の「電気の安全」を任される立場になるためプレッシャーはありますが、その分待遇や手当が上がる傾向があります。
近年では非選任業務から始め、数年経験してから選任にステップアップするキャリアが一般的です。
■ 3. 上級キャリア:設備の管理責任者・技術系マネージャーへ
主任技術者の経験を積んだ後、多くの企業で次のキャリアパスが開けます。
● 技術課のリーダー・マネージャー
・複数の設備グループを統括
・工事や更新の予算管理
・中期設備計画の立案
・部下育成や採用
設備運用を超えて、経営寄りの技術判断に関わる段階です。
電験資格者は「設備管理 × 電気の専門性」という希少性から、管理職に抜てきされやすい特徴があります。
● 施設全体の技術責任者
商業施設やデータセンターでは
「ファシリティマネージャー」
「テクニカルマネージャー」
といった役職で、電気・空調・防災など複合設備を統括する立場へ進む例も多くあります。
■ 4. 独立・フリーランスというキャリアもある
電気主任技術者の数が減少している現在、
「外部委託(外部の電験保持者が企業の保安管理を代行)」
の需要が急増しています。
外部委託は、保安法人に所属する方法と、個人事業として独立する方法の2パターンがあります。
● 保安法人に所属した場合
月額契約で複数の顧客施設を担当
安定した収入(年間500〜700万円が一般的)
経験者はさらに高待遇も可能
● 個人で独立した場合
顧客数に応じて年収が大きく伸びる
年収1,000万円以上も珍しくない
契約管理や営業も自分で行う必要がある
“資格がそのまま稼ぐ力につながる”点はほかの技術資格にはない大きなメリットです。
■ 5. キャリアの多様化:電験を軸とした別分野への展開
電験保持者は電気設備の理解が深いため、以下のような横展開も可能です。
・再エネ関連(太陽光・風力など)の保安・O&M
・データセンターの設備管理
・電力会社の保守・系統運用
・プラントエンジニアリング
・電気工事会社の施工管理
・メーカーの技術営業(電気機器・保護継電器など)
特にデータセンターや再エネは人材不足が深刻で、電験保持者のニーズが高まっています。
■ 6. 電験資格が「キャリアの保険」になる理由
電験の最大の魅力は、どんな業種に進んでも
「電気設備の知識」という普遍的スキルが武器になる点です。
設備管理ならキャリアを積みやすい
製造業でも専門性が強く評価される
電気工事に進む場合も上位資格として活きる
独立という選択肢も残されている
一度取得すれば食いっぱぐれない資格とも言われ、転職市場でも常に需要があります。
■ まとめ
電気主任技術者のキャリアは、大きく分けると
設備管理・保全職としてスタート。
主任技術者へステップアップ管理職・技術リーダーへ独立・外部委託という自由な働き方。
再エネやデータセンターなど新領域へ展開という多様な道が開けています。
技術者としての安定性と、専門家としての価値向上、さらには独立という自由度まで兼ね備えた電験資格は、まさに“未来の選択肢を最大化する資格”と言えるでしょう。